母と娘には互いが必要であった。
青年はその母を自由にしてやりたかった。
少年たちは娘に「同じ夢を見よう」と語りかけた。
人間であるアナベルにはひとりの娘がいた。ガーベラという名の娘は、アナベルによってマリーゴールドの花に囲まれた屋敷に閉じ込められるようにして暮らしている。人間種と吸血種の混血<ダンピール>であるガーベラは、「窓際の化け物」と呼ばれ、街中から忌み嫌われていた。
アナベルは「ダリ・デリコ」というペンネームで、永遠の命を持つ吸血種<TRUMP>の伝承を主題とした作品で人気を博す小説家であり、吸血種の間で実しやかに囁かれる<繭期少年少女失踪事件>を次なる題材に選ぶ。
その頃アナベルは、自身の大ファンだというふたりの少年、ソフィとウルに出会う。
母子を取り巻く人間関係の中で、錯綜する数々の‘愛’が辿り着く結末はーー。
※舞台本編のみ収録